伸びやかで聴き心地のいい歌声と、キャッチーなメロディで注目を集めているケラケラは、ふるっぺ(Ba)と森さん(Dr)、そしてボーカルのMEMEの三人組だ。2011年に結成されたケラケラだが、そのストーリは遡ること6年前、大阪でのあるバンドのサクセス・ストーリーから始まる。当時、ふるっぺと森さんが参加していたバンドが、映画デビューとCDデビューが一度に叶うというオーディションに合格!二人はバンドの仲間とともに、音楽シーンのみならず人気女優と共演という形で銀幕にも踊り出た。身震いする気持ちでサクセス・ストーリーの尻尾を捕まえたと思った瞬間、だが事態は思い描いたものとは全く違う方向に傾いていく。バンドの解散、そして再出発を目指しての上京。なにもかもが上手くいかない日々が続き、それまでの自信やプライドはズタズタに引き裂かれた。しかしこの大いなる挫折は、今日ケラケラが描く世界の根底に流れる優しさや誠実さにつながっており、さらに日常の音楽活動のなかで礼儀正しく人に接するという立ち振舞にも、大きな影響を与えていると思える。つまり大いなる挫折はケラケラの宝物でもあるのだ。そして天性の歌声を持っているボーカルMEMEとの出会いも、もう一つの大切な宝物であるといえよう。これから親子の世代を超えた末永く歌い継がれるような歌を作り、大勢の人々に愛されるバンドになりたいと願うケラケラ。そんなケラケラの1stアルバム「ケラケライフ」には、その名の通り、それを聴くことが生活の一部になるような楽曲がぎっしりと詰まっている。
100名以上の中から、ようやく巡りあう
──ケラケラができるまで、つまり結成までのお話をおうかがいします。最初、ふるっぺさんと森さんのお二人は、ケラケラの前に映画にご出演になったというお話ですが…。
ふるっぺ:昔、森さんと一緒にやっていたバンドで、映画デビューとCDデビューが同時に出来るオーディションに受かりまして、それでその時のメンバー全員で映画に出ました。
──なんと相武紗季さんが主演の、「BEAT KIDS」という映画です。その当時、お二人は大阪にいらしたのですか?
ふるっぺ:はい、大阪にいました。それで色々あってそのバンドが解散になって、二人で大阪から東京にやって来たのです。順を追うと2005年に映画があって、2006年にバンドを解散して、2011年にケラケラを結成して、という流れです。
──その2011年の時に、ボーカルのMEMEさんと出会ったわけですね?
MEME:そうですね。
──ボーカルを決める時は、オーディションとかあったのですか?
ふるっぺ:オーディションと言っていいのかどうか分かりませんが、ミクシィでボーカルの公募をかけて、結局、最終的には50人くらいの方とお会いしました。音源をもっていらっしゃる方には音源を送ってもらったり、ない方にはカラオケで歌ってもらったりして、そういう形でのオーディションでした。
──SNSだけの募集とはいえ、応募は結構あるんですね。
ふるっぺ:正直、反響は凄かったですね。実際に100人以上の方と連絡をとって、そのうち直接会ったのが50人ですから。でもなかなかこれだという人に巡り会えなくて、もう、諦めかけていたんです(笑)。
──それでやっと巡りあえたMEMEさんですが、第一印象はどうでした?
ふるっぺ:歌声が凄く真っ直ぐで、歌詞を丁寧に届けてくれそうな感じがしました。それと笑顔が印象的でした。いつも笑っていて、ボーカルとして頼もしい感じがしました。
MEME:私は最初に音源を聴いた時に、メロディが凄く良くて、是非一緒にやりたいなって思いました。それで実際会ってみたら、二人とももともとプロでやっていたので、結構近寄りがたい感じなのかなって思っていたのですが、そうでもなくて…(笑)。しかも二人とも関西出身ですけど、あんまり大阪人っぽくなくて、というか面白くなかったのが印象的でしたね(笑)。
──因みに、それまでMEMEさんはライブとか音楽活動をされていたのですか?
MEME:いいえ、全くのアマチュアでした。
──非常に伸びやかな歌声で、聴き心地の良い、耳に残るボーカルで、一度聴いたらやみつきになります。
MEME:ありがとうございます。
「友達のフリ」がYouTube再生100万回
──今回発売になる1stアルバム「ケラケライフ」ですが、これまで発売してきたシングル曲が7曲、そして新曲も5曲入っているという非常にお買い得な内容です(笑)。まず、ジャケット写真ですが、初回限定盤の方は、切手の模様の中に3人がいらっしゃいます。
ふるっぺ:それは今までのシングルのジャケットを載せたら、今までケラケラに興味を持っていてくれたファンの人達の目を引くことが出来て、もっと興味を持ってもらえるかなっていうことで、こういうデザインになりました。切手の図柄が、これまで発売したシングルのジャケット写真になっています。
──一方、通常盤の方は、3人が封筒の中に入っていますね。
ふるっぺ:それはイメージとして、僕らの音楽を届けたいということですね(笑)。
──それで最初に入っている曲が「スターラブレイション」で、これはドラマの主題歌です。ふるっぺさんの楽曲解説では『打ち合わせがある。ということで渋谷のファミレスへ向かうと「ドラマの主題歌が決まりました」っていうお話を聞いたときは トンデモなく驚きました。作詞するときに意識したのは、自分がラストシンデレラの主人公だったらどんなことを言ってもらえたら「頑張ろう!」と思えるか、それを一番に考えて書かせていただきました。空を駆け上がるような、とてもポジティブな曲に仕上がったと思います』ということです。
ふるっぺ:今までこういうジャンルの曲は書いたことがなかったので、お願いされた時はちょっと悩みました。でも、コンセプトが恋愛の応援歌ということだったので、ちょうどその頃は、自分がバンドとして成功したいともがいていた時期でもあったので、その時の自分をはげますというか、その時の自分に歌っているという感覚もある楽曲ですね。
──ドラマは篠原涼子さんが主演した「ラストシンデレラ」という作品で、ちょっとエッチなラブコメディでしたね。
ふるっぺ:そうですね。曲を作る時は事前に何回分かの台本を頂いて、作りました。
──因みに「スターラブレイション」というのは造語ですか?
ふるっぺ:そうです。これは「キラキラ、ドキドキした恋をしようよ」というイメージの言葉ですね。キラキラが「スター」で、恋が「ラブ」、そしてドキドキがバイブレイションの「レイション」というイメージで作った造語です。
──確かドラマでは篠原さんが最後に選ぶのは若い恋人の方で(笑)、しがらみを投げ捨てて彼氏の胸に飛び込んでいくっていうエンディングでしたよね。
ふるっぺ:ですから歌詞の世界もある種の障害というか、何かを乗り越えて結ばれた二人という世界観になっています。
──今回のアルバムには「スターラブレイション」のバラード・バーションも収録されているのですが、MEMEさんとしてはどちらがお好みですか?
MEME:どっちもいいです。最初はアップテンポの曲に仕上がっていたので、私も元気よく歌っていました。それでバラード・バージョンになった時は、元気のいい曲をバラードで歌ったらどうなるんだろうと思って、ハマるのかどうか少し不安でした。でも、実際に歌ってみたら、ドラマの中でも凄く切ないところで流れてきて、見てくださった方からも音源が早く欲しいというリクエストを頂きました。ですから両方いい。バラードも歌っていて楽しいです。
──そしてケラケラのブレイクのきっかけとなる「友達のフリ」も収録されています。こちらは『実体験の片想いソングです。言いたいけど言ったらこの関係が壊れてしまう。壊れてしまうくらいなら友達のままでいよう。そんな曲になっています。この曲は初めてYouTubeにアップした曲で、たくさんの方が共感コメントを書き込んでくださり、こんな切ない経験をしたのは自分だけじゃないんだ。と逆に励まされた曲でもあります』と解説されています。
ふるっぺ:実は2011年に、この曲をYouTubeにアップしたのをきっかけにして、ケラケラという名前をつけて活動し始めたのです。当時は、宣伝は全くしないで、ひっそりとアップしたのですが、口コミとかで広がって、気がついたら再生回数が100万回を記録していました。
──それだけ大勢の人々の共感を得たということでしょう。この歌詞は実体験に基づいているということですが、歌詞のクレジットは森さんとお二人になっています。ということはお二人共通の体験ですか(笑)?
森さん:いえ、これはふるっぺの実体験です。
──歌詞の内容から察すると、ふるっぺさんはシャイなんですね。
ふるっぺ:シャイですねぇ(笑)。自分では深く考えずに書いたのですが、草食男子的な内容になっています。自分が好きな人がいて、その人と何人かの人と一緒に遊んだ時に、その人が、自分が好きな人の話をし出して…。それで自分には可能性がないんだなって思って、友達でいることにするという…、自分の気持ちを吐き出すようにして書いた歌です。実は最初はそんなに沢山の人に共感してもらえるとは思っていなかったので、YouTubeの大反響は意外で、凄く驚きました。
──この歌詞が描いているメンタリティは、女性にもありうる話ですよね?
MEME:ありますね。
──MEMEさん的にはどうですか?こういう状況では友達のフリをする、あるいは肉食女子的にバチっと告白する?
MEME:私もこの歌詞の通り、バチっとは行けない派ですね。どっちかといえば、男の人から好きだって言って欲しい派です。
──じゃあ、今までに友達のフリのまま、気づかれずに終わった恋もあった?
MEME:あります、あります、つーか、ありました(笑)。
──ではみなさんの思いが詰まっている曲ということでまとめさせて頂いて(笑)、一方、収録されている新曲では「たこ焼きソング〜大阪で生まれたからって〜」というのがあります。ケラケラのお二人は大阪出身ということで、この曲はまさにそんなバック・グランドが丸出しの曲です。解説には『MEMEがある日僕と森さんに「大阪出身なのに全然面白くない」と言ったので、アンサーソングとしてこの曲を作りました。 「大阪で生まれたからってみんなオモロイわけやないねんで!」この魂の叫び、全国の皆さんに届けば嬉しいです。 そしてライブではみんなと合唱できたらな。と思います!』とあります。
ふるっぺ:もう歌詞のそのままですが、大阪出身というだけで、面白いと思われがちで、その風潮に反逆する気持ちで作ったら面白いのではないかと思って作りました。その思いは上手く表現できたと思います。
──曲の途中に喋りというか、ひとり漫談が入っています(爆笑)。
ふるっぺ:デモを家で作っていたのですが、実験的に小話風に喋って入れてみたら、それがメンバーにも評判が良かったので、そのまま活かしたのです。
──ただCDで聞いていると、話のオチがないので、オチを教えてください(笑)。
ふるっぺ:いや、入っているまんまで、その話にはオチはないのです。
森さん:オモロイこと言えそうで言えなかった(笑)。
MEME:そう、そう、二人とも面白くないんですよ(笑)。面白いこと言ってみてってリクエストしても、絶対に言ってくれない(笑)。
──本当に歌詞のまんまですね。
ふるっぺ:でもライブでは、このパートは毎回違うこと喋るようにしています。今回はこれにしようって事前に決めるんですが、これがまたプレッシャーになる(笑)。
──毎回、内容を変えるのは大変ですね。しかも趣旨からいって、笑いをとってはいけない(笑)。
ふるっぺ:いや、本当は笑わせたいのですが、正直、上手く話が作れないのです(笑)。
──そういえば「ナミダフレンズ」にも台詞というか、掛け合いが入ってきますね。
ふるっぺ:この曲は二人で作詞しているのですが、二人で作る場合は、だいたい僕が1番を書いて、2番を森さんにお願いするというパターンが多いですね。この「「ナミダフレンズ」は、故郷の友達に喋りかけているような曲なのです。
──この曲は1stシングルの曲で、ふるっぺさんの解説では『夢見て上京してきたものの中々うまいかない日々。人との付き合いに悩んだこともありました。そんなとき地元の友達の温もり、 優しさを再実感してこの曲が生まれました。「どれだけ純粋に人と繋がっていられるか」の大切さを歌った曲でもあります』とのことです。ケラケラを結成して、それが軌道に乗るまで、相当な不安がありましたか?
森さん:ありましたね。
ふるっぺ:上京してきた時は夢いっぱいだったんですが、思うように上手く行かなくて…。自分は10代の時にデビューさせて頂いていたので、変に自信があったのです。結構何をやってもいけるなんて勘違いしていた時期もありました。それをものの見事に打ち砕かれましたね。その時にむしょうに大阪の友達に会いたくなって、故郷が懐かしくて、里心がついちゃった。そういう思いがつまった曲です。
──因みにMEMEさんは今回のアルバムで、これがオススメという曲がありますか?
MEME:やっぱり今回自分で書いた「笑ったもん勝ち」が印象に残っています。自分がケラケラに入る前にソロでやろうかと思っていた時期に、音楽でなかなか上手く行かなくて…。そんな不安な時に「悩んでいても上手くいかないし、前を向いて笑って頑張っていれば、きっと上手くいくよ」っていう自分に向けての応援歌の意味があります。ですから、皆さんにも日々生きていく中で悩んでいる時に聴いてもらって、すこしでもその背中を押せたらいいなぁという思いを込めて歌っています。
いつか味の素スタジアムに凱旋を
──ケラケラはふるっぺさんがベースで森さんがドラムという編成ですが、作曲は何でやるのですか?
ふるっぺ:作曲はギターです。
──ベースで作曲だとハナワさんになっちゃう(爆笑)。
ふるっぺ:そのやり方だと、メロディも広がらないですね(笑)。
──と思って真剣に考えましたら、ポリスのスティングとかドリカムの中村さんとか結構先駆者がおられました(笑)。でも、前身のバンドからベースとドラムというリズム班だけが独立しちゃうのも面白いですね(笑)。
ふるっぺ:二人でしめし合わせて抜けたわけではないのですが、普通に解散した中で、偶然二人になったという感じです。
──作曲はギターで、ライブではベース専門ですか?
ふるっぺ:曲によってはギターも弾いています。アコースティックなライブでは、ギターもよくやります。
──そもそもふるっぺさんは、最初に始めたのはギターですか?
ふるっぺ:最初はギターをやりたくて、ギター部というクラブに入ったら、その実態が軽音楽部だったのです。それでベースしか余っていなかった(笑)。最初は仕方なくベースを弾いていたのですが、でも、だんだん好きになりました。
──MEMEさんは、歌手になろうと思ったのは何時頃ですか?
MEME:もう生まれた時というか(笑)、小さい時から歌うのが好きでした。それで歌手になりたいとずっと思っていました。でもなかなか難しくて、大学までは普通に生きてきました。
──じゃあ、もっぱらカラオケで実力を磨いていた?
MEME:カラオケ・ルームにギターを持ち込んで、毎日、いりびたって練習していましたね。人に聴かれるのが恥ずかしかったので、ギターを持つことで「これは練習だよ」ってアピールしていた(笑)。それで曲を作ったりもしていました。
──昨今のバンド事情として、カラオケ・ルームでの練習はありですか?
ふるっぺ:ボーカルならありですね。
森さん:ドラムは無理(笑)。
──森さんがドラムを始めたのはいつからですか?
森さん:最初は中学生の頃に、ギターを始めたのが音楽に入るきっかけです。でも高校一年生の時に、やっていたバンドのドラムがいなくなってしまったのです。そこからドラム担当になりました。
──ドラムは大変ですね。セットも高いし(笑)。
森さん:ですから練習のために、機材のあるスタジオに通っていました。確かにそう考えると、ほかの楽器に比べて、ドラムは大変ですね。
──自宅でも叩いていましたか?
森さん:家では消音パットの「なんちゃってドラム」みたいなのがあるので、もっぱらそれで練習しました。
──普通ので叩いたら、音が大きいから家族や近所から怒られちゃう(笑)。それで練習するうちに、ギターよりもドラムにはまっていったのですね。
森さん:そうですね。ドラムを初めて叩いた時の爽快感で、やみつきになったのです。そこから、はまりました。
──そうやって個々に色々な思いや事件があって、ひとつのバンドにまとまっていくから人生は面白いですね。ところで今回のアルバムにはDVDもついてますが、どんな内容ですか?
ふるっぺ:楽曲のプロモーション・ビデオが4曲入っていますが、そのうち新撮なのが「虹色ハートビート」のPVです。海辺で爽やかな感じの映像ですので、是非、ご覧ください。
──この夏の猛暑の中で撮影ですか?
MEME:いや、冬の寒い時期でした(笑)。でも爽やかな感じですから、楽しんで下さい。
──では最後にこれからの抱負をお願い致します。
ふるっぺ:僕は曲を書く人間として、後々まで残っていくような曲を作りたいので、親子とかで楽しんでもらえるような音楽を届けていきたいと思っています。
MEME:ファンの皆さんと親友みたいな距離感でいたいです。それくらいの存在でいたいし、全国でライブをやれるようになって、その会場で直接お会いして、そしていずれは地元の調布にある味の素スタジアムで、ワンマンライブが出来るように頑張りたいです。
森さん:僕もファンの皆さんと近い存在でありたいです。僕らを見ただけで、笑顔になれるような、そういう皆さんに愛されるようなバンドになれたらなと思います。
──味の素スタジアムはサッカー場ですよね?
MEME:そうですね。5万人入ります!デビューの時には、なんと50人の前でやらせていただいたので、いつかは5万人の前でやりたいです。
──年末に向けてライブの予定は?
ふるっぺ:12月に東名阪でワンマンツアーがあります。あと学園祭もあって、昨日も青山学院の学園祭でやってきました。
──学園祭はどうでした?
MEME:雰囲気もノリも楽しかったです。学園祭で歌うのは楽しいですね。
──そこから目指せ5万人ですね。
ふるっぺ:そうですね。頑張りますので、応援よろしくお願い致します。